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資料 労働条件調査

2008年2月15日

2007年度 看護職員の労働・健康実態調査

 現在、全国的に深刻な看護師不足となっています。奈良県はそのなかでも人口10万人比では全国41番目であり、新卒の1/3近くが県外へ就職していく流出県となっています。医療関係者やわれわれの運動で、県や自治体も奈良県の看護師が不足していると認識し始めています。

 昨年から取り組んでいる「看護師不足の改善を求める」地方議会の意見書採択運動によって、県下39市町村中34市町村が意見書を採択し、県や国に提出しています。奈良県議会においても、3月議会で意見書が採択されました。国も、看護師確保・基本指針の見直しに動きつつあります。また、奈良県においても、なんらかの対策をとらなければならない状況まできています。

 今回、実態調査を行い客観的に看護職員のおかれている実態を明らかにし、マスコミ等を通じて社会的にアピールしながら、国や県・市町村などへの要請に生かしたいと思います。

【調査の集約期間】
2007年4〜6月
【調査の対象】
奈良県内の医療機関・介護関連の事業所で働く看護職員。
【取扱い団体】
医師・看護師の増員を求める奈良県実行委員会
実行委員長 上村 啓子
〒630-8325 奈良市西木辻町200-2F
奈良県医療労働組合連合会内
電話/ファクス(0742)27-9850

1,有効回答数と回答者の属性

  1. 回収数 「県内病院の就業看護職8,020名の1割(812名)のアンケートを集約」
  2.  アンケートは奈良県医労連の組合がある医療職場(7病院・18診療所)と、今回協力をお願いした組合のない11病院、看護協会参加者(6月9日157名)から回収した。6月21日までの集約数は916名となった。これは平成18年末看護師就業届けでみれば奈良県の病院・診療所で就労している看護師の8.9%、病院で就労する看護師の1割(10.12%)に相当することから、現在県内で就労する看護師の実態を反映したアンケートといえる。
  3. 職場区分では、①病院88.6%、②診療所8.1%、③訪問看護ステーション2.2%、④介護施設(老健・特養等)0.7%となっており、圧倒的に病院の看護職員が多い。
  4. 雇用形態では、①常勤職員89.7%、②非常勤職員(パート)10.0%となっている。
  5. 性別では、①男性4.0%、②女性95.7%で圧倒的に女性が多い。
  6. 年齢区分では、①10代0.3%、②20代21.8%、③30代27.5%、④40代24.7%、⑤50代21.3%、⑥60歳以上3.8%となっている。
  7. 看護歴では、①1〜3年目11.6%、②4〜10年目26.2%、③11〜20年目32.0%、④21年目以上30.0%となっている。

2,各設問の単純集計について

  1. 慢性疲労が約7割に
    疲れの回復度では、①疲れは感じない1.3%、②疲れを感じるが翌日には回復27.2%、③疲れが翌日にも残る47.1%、④休日でも回復せず、いつも疲れている24.32%となっており、③と④を合わせた「慢性疲労」は71.4%にもなっている。20代で70.0%(休日でも回復せず20.0%)、30代で73.4%(26.2%)、40代で79.2%(28.8%)、50代で67.7%(25.1%)と特に40代での慢性疲労が多い。
  2. 4割強がストレスを「非常に感じる」
    最近、ストレス(肉体的あるいは精神的につらいと感じること)をどの程度感じているかという項目については、①まったく感じない0.4%、②あまり感じない10.8%、③やや感じる46.6%、④非常に感じる41.7%となっている。③④を合わせた「ストレスを感じる」は88.3%となっており、9割近い看護師がストレスを感じ、4割強はストレスを非常に感じている。
  3. 健康不安が81.2%に
    自分の健康状態については、①健康であるは18.8%に止まり、②健康に少し不安がある57.3%、③健康に大変不安がある21.0%、④病気がちで健康ではない2.9%となっている。②〜④を合わせた「健康不安」は81.2%、③④は23.9%と4人に1人が深刻な健康状態にあるといえる。
  4. 十分な看護ができているは1割にも満たない
    「患者さんに対して十分な看護ができているか」については、①できていると思う9.9%、  ②できていないと思う63.4%、③わからない26.0%となっている。①できていると思うが1割にも満たなかったことは、忙しさの中で仕事に追われている実態を示している。
  5. できていない理由は少ない人員と過密業務
    十分な看護ができていない理由は何かについては、①人員が少ない35.8%、②業務が過密27.9%、③スタッフ間の連携が悪い9.7%、④個々の能力や技量の不足18.1%、⑤看護以外の業務が多い21.3%、⑥その他2.5%となっている。少ない人員体制と過密労働の改善が急務となっている。また、「看護以外の業務が多い」も2割強の看護職員が答えており、記述の中でもクラーク(事務スタッフ)の配置を求める声もあがっていた。
  6. ミス・ニアミスは91.0%も
    「医療ミス、ニアミスの不安を感じていますか」の質問には、①はい92.4%、②いいえ5.5%となっている。また、「これまでミス、ニアミスを経験したことがあるか」に対しては、①ある91.2%、②ない7.0%となっている医療現場は医療事故と隣り合わせの危険な実態にあり、不安をかかえながら働く看護師の実態を浮き彫りにしている。  
  7. ミス・ニアミスが減ったは25.7%
    「ここ1年、ミス、ニアミスは増えたか」の質問に、①増えた11.6%、②変わらない57.2%、  ③減った25.7%と答えている。「減った」が「増えた」を大きく上回っており、ミスをなくす努力が職場、個々で取り組まれた結果として現れている。しかし、「増えた」「変わらない」の合計は68.8%であり、依然ミス、ニアミスの改善は遅れており、アンケートからも人員不足など構造的な問題があることがわかる。  
  8. 医療事故、ミスが減らない1番の原因は何か
    医療事故、ミスが減らない1番の原因は何かという記述式の質問には623名(68.0%)の看護職員が答えている。「確認不足」、「思いこみ」など個人の問題をあげている声もあるが、「人員不足」など職場環境の厳しさを59.7%(372名)の看護職員が上げている。
  9. 7人中6人が「仕事をやめたい」と考えている
    「今の仕事を辞めたいと思ったことはありますか?」の質問には、①いつも思っている22.4%、②ときどき思う63.1%、③思わない14.0%となった。①②を合わせた「辞めたいと思う」は85.5%と7人中6人は「仕事をやめたい」と考えている。さらに2割強の看護職員が「いつも」と答えており、このままの状況が続けば、退職〜いっそうの看護師不足とならざるをえない。
  10. 辞めたい理由は低い賃金と忙しすぎるから
    「仕事を辞めたいと思った理由」について(2つまで回答可)は、①賃金が安い32.3%、②仕事が忙しすぎる29.9%、③本来の看護ができていない21.7%、④体力がもたない・健康を害して19.5%、⑤職場の人間関係15.6%、⑥家族に負担をかけている14.2%、⑦他にやりたいことができた5.1%、⑧その他7.1%となった。最も割合が高かったのは「賃金が安い」で、次いで「仕事が忙しすぎる」となっている。仕事にみあった賃金への改善と、体制を増やすことが第1の離職防止策と考えられる。
  11. 定年退職まで働き続けたいは25.0%
    「今の仕事をいつまで続けたいと思いますか」については、①体力の続く限り42.6%、   ②定年退職まで25.0%、③他の仕事につくまで10.0%、④結婚するまで5.0%、⑤出産するまで4.1%、⑥その他12.7%となった。⑥については、全てが否定的ではないが、記述をみると「わからない」、「気持ちが続く間」、「すぐに辞めたい」、「限界がくるまで」、「考えられない」、「あと10年」、「子どもが卒業するまで」等となっている。看護職場は定年まで働き続けられる職場ではなく、早急に改善されなければ4人に3人が途中で退職することになる。

3、各設問のクロス集計

  1. 疲労感
    「休日でも回復せず」と回答した223名を抽出してみると、ストレスを「非常に感じる」が77.1%(全体41.7%)、「健康である」8.1%(18.8%)、十分な看護ができていない理由として「人員が少ない」47.5%(35.8%)、退職の意思「いつも辞めたい」38.6%(22.4%)、「時々思う」56.3%(63.1%)と計94.9%(85.5%)となっており、疲労との関連が予測される。これらをふまえ、慢性疲労となる原因把握・分析とその改善は離職防止上も急務となっている。
  2. ストレス
    ストレスを「非常に感じる」と回答した382名を抽出してみると、疲労との関連は上記の通りである。退職の意思でも「いつも辞めたいと思っている」は37.4%(全体22.4%)となっている。
  3. 健康状態
    「健康に大変不安」、「病気がちで健康でない」と回答した219名を抽出した。疲労感の「休日でも回復せず」が50.2%(全体24.3%)、退職の意志「いつも辞めたい」37.9%(22.4%)となっており、関連性が大きいと考えられる。
  4. ミス・ニアミス
    ミス・ニアミスの不安は全体として92.4%と高いが、特に20代95.3%(30代92.5%・40代93.8%・50代88.2%)、疲労が「休日でも回復せず」96.9%、ストレス「非常に感じる」95.5%、仕事いつまで「結婚するまで」「出産するまで」98.8%、退職意志「いつも思っている」98.5%(ときどき92.0%・思わない85.2%)で高くなっている。
  5. 退職の意志
    年齢別にみれば①いつも思っているは20代26.0%、30代22.6%、40代20.4%、50代22.6%、②ときどき思うは20代62.0%、30代68.3%、40代64.2%、50代55.9%、③思わないは20代11.0%、30代9.5%、40代14.6%、50代21.0%となった。①②を合わせた「辞めたいと思う」は20代88.5%、30代90.9%、40代84.6%、50代78.5%となっており、7人中6人が退職意識がある中でも30代、20代の順に退職意識が高い。「いつも思っている」と回答した205名を抽出すると、疲労との関連でも、疲れが翌日に残る44.9%(全体47.1%)、休日も回復せず42.0%(24.3%)と86.9%(71.4%)となっている。ストレスでも非常に感じる69.8%(41.7%)、十分な看護が「できていない」74.1%(63.4%)、ミスの不安が多くなっている。十分な看護ができない理由でも、人員が少ない47.3%(35.8%)、業務が過密39.0%(27.9%)、辞めたい理由でも、仕事が忙しすぎる44.9%(29.9%)体力がもたない28.8%(19.5%)となっている。仕事をいつまでについても定年退職までが13.7%(25.0%)となっている。
  6. やめたい理由
    20代では、①賃金が安い40.5%(全体32.3%)、②仕事が忙しすぎる40.0%(29.9%)と、全体と比較し高い。30代では、①賃金が安い34.9%、②仕事が忙しすぎる29.0%となっているが、家族の負担が26.2%(14.2%)と高い。40代では賃金が安い39.4%(32.3%)と高くなっているが、全体とほぼ同じ傾向となっている。50代では賃金が安い17.4%、家族の負担5.6%と低くなり、体力がもたない25.6%(19.5%)、職場の人間関係22.1%(15.6%)が高くなっている。
  7. 仕事をいつまで
    20代の看護職の32.0%、実に3人に1人が結婚・出産を契機に退職を考えている。また、30代の辞めたい理由で「家族の負担」が26.2%(全体14.2%)と答えているように、結婚しても、出産、育児をしながらも働ける条件整備や、いったん結婚、出産・育児で退職した看護職が、現場に復職するための支援策が求められている。

4,看護改善・離職防止の記述から

 182名から記述があった。貴重な意見が寄せられており、アンケートの結果とともに活用させていただく。傾向としては、賃金・ボーナスの引き上げ(大阪などとの格差も)、結婚・出産・育児をしながら働き続けられる条件整備(保育所、時間短縮・そのためにも人員増など)、人を増やしてゆとりある看護の実現、サービス残業や休日や時間外での半強制的な研修や会議で休みが取れないことの改善、リフレッシュ休暇など一定期間の休暇制度、看護学校での教育に対する意見があった。

5,看護師の労働・健康実態調査から

  1. 「看護師のおかれている状況をなんとかしたい」、その思いが集まった結果、916名ものアンケートが集約された。病院で働く看護師の集約数は812名となり、平成18年末での就労数(病院)8,020名の1割をこえて集約することができた。看護師一人一人が記載したアンケートであること、その集約数・率からも現在の奈良県で働く看護師の労働・健康実態を反映した調査であるといえる。
  2. 「慢性疲労が約7割に」、「4人に1人が休日でも疲れが回復しない」、「9割近くがストレスを感じ、4割強が強く感じている」、「健康不安は8割で4人に1人が深刻な健康状態にある」、「十分な看護ができているは1割にも満たない」、「ミス・ニアミスの不安は92.4%」、「ミス・ニアミスの経験は91.2%」、「7人中6人が仕事を辞めたいと思い、2割強の看護師はいつも思っている」、「定年まで働きたいは4人に1人」というように、今、奈良県の看護師の置かれている状況は深刻である。この状況が改善の方向にすすまなければさらに離職者をうみ、看護師が魅力ある仕事に映らず、看護師を希望する人も減るという悪循環になることが予測される。この深刻な状況を、県民の求める看護を守るためにも、いま必死に働いている看護職員、それを支える家族のためにも、ますます高齢化、重介護化していく奈良県の今後の医療・介護を拡充していくためにも、早急に改善をしなければならない。
  3. このような深刻な状況の根底には、なによりも看護師不足の問題がある。そもそも日本は諸外国と比べ看護師は不足状態であるわけだが、その中でも奈良県は平成16年調査で、人口10万人当たりの看護師数が763.2人と全国41番目となっている。全国平均は897.7人であり、少なくとも全国平均並みにするためには1,912人の看護師を増やすことが必要となる。近畿でトップの和歌山県(全国22位・1,049.4人)並みにするには、4,068人の増員が必要となる。また、県の需給計画と比較しても、平成18年で12,638人の需要見込みに対し948人の不足となっている。教育内容など養成の問題、確保のあり方の問題、処遇の問題、職場での離職防止策の問題、研修の問題など、様々な問題があり改善していかなければならないが、この困難の根底は看護師不足であり、今よりも看護師を増やすという認識に、行政、関係者、現場看護師が立つことが必要である。
  4. 絶対的な不足の上で、奈良県では看護師が働く場に偏りがみられる。就労看護師の推移をみると、平成18年末で前回調査(2年毎)と比較すると、病院の6.8%増に比べ診療所では24.3%増となっている。平成14年では病院も診療所も6%台の増加となっていることから、ここ数年で急速に診療所への偏りが進んだといえる。県の需給計画と比較しても、平成18年の診療所の需要見込み1,438人に対し供給数1,940人と502人上回っている。それに対し病院(療養型医療施設含む)では、8,506人の需要見込みに対し、供給数8,020人と486人の不足となっている。アンケートからも推測されるが、夜勤など病院勤務の労働条件では働けないという看護師が増えていること、結婚・出産・子育てでいったん退職した看護師は、病院勤務になかなかもどりにくい状況があることがこのような結果にでていると考えられる。医師でも過酷な労働条件となっている勤務医から開業へという流れが広がっているが、看護師でも同様の傾向がみられる。
  5. 看護師を増やす方向に舵をきったうえで、そのために養成の問題(学校の定員割れ:県立五条〜看護職のなり手をうみだす+魅力的な学校づくり・環境整備、卒業生の県内就職率を高める:社会人入学者の就職率は高い〜)、離職予防策(他府県:特に大阪との賃金格差をどうするか、結婚・出産・育児と両立可能な環境など)、育成(新卒者の対応など)、潜在看護師の掘りおこし(復帰支援)について現状を分析し課題を明らかにし、具体的に改善をすすめることが必要となる。
  6. これらをすすめるには、責任の所在を明確にしたうえで、関係者の認識を一致させ、共同して取り組みをすすめることが必要であり、島根県や富山県が行っているように、県が看護師の養成と確保のあり方について検討委員会を設置し、そこで必要な実態調査を行い、そのうえでの施策づくりが必要である。